一つと自分は勘定した。 時計が二つ目をチーンと打った。 自分の過去、現在、未来をことごとく照して。 輪の上を何遍も廻った。 待てと云う相図である。 はたしてそうならにでもできる事だと。 その刹那に急に命が惜しくなった。 顔のには窓が見えた。 けれども子供は「今に」だけを覚えたのみ。 そうして絶壁の上へれた。
――夏目漱石






こんな夢を見た。


01.
血赤は鮮やかで、流れる黒髮は艷やかだ。酷く乾いた感情で、これが美しさなのだと悟つた。 潤んだ眸は影を落とすことも無く、たゞ漫然と此方を見てゐる。その黒の中には己の姿が映り、そしてその己の眸は矢張り相手を見てゐるのだから、堂々巡りのその様はひどく滑稽だつた。夢が見たいと、自分は呟いた。幾つ夜を越えても、貴方の全てが手に入ることはないのだと續けた。ならばせめて夢が欲しい。透き徹るほど深いその漆黒に、己が欲を映し出してしまへば夜空を星が翔る様に美しいものが見えるかも知れぬ。月が缺けるのは罪を贖ふ爲なのだと知つてゐるか、と見つめてゐた脣から問ひかけが漏れる。たゞ艷めくばかりの黒を敷き詰めて、自分自身ではそれ以外の色を持ち得ないのだとその人は云ふ。だがその見開かれた瞳の中には、銀光が宿つてゐる。その様に月を架ける事が出來るのなら、私にも星を散らすことが出來る筈だ。さう告げれば、首を傾げて、相手は應じる。なら、幾千の星を碎き去り、どれだけの時が掛かつてもそれで埋め盡くしてしまへるか。もし、もしさうなら、屹度その時は。返事を遮つて叫ぶ。どれだけ掛かつたとしても構はない。夢を見たいのだ。

「その爲になら、死んでしまへるのに」

厭いたやうに煌ゐた刀を弄ぶ腕から、またぽたりぽたりと露が滴る。その赤に接吻すれば、伏せた瞳は慥かに刹那新月の輝きに滿ちてゐた。



02.
何故分からぬのだらうと脣を噛む。どう説いても、分かり合へることが無いのかもしれない。焚かれた香の匂ひが鼻に付き、ちらちらと美しい彩の取り合はせが目に障る。その酸鼻な樣といつたらまるで地獄の釜を開けたやうだ。慕はしい朋の姿が目蓋に蘇り、そしていとけない微笑みが映る。どうしても優しくありたかつた。焦臭いのは、燒け落ちた木の匂ひだ。濕つてゐるのは長雨のせゐだ。清々しく廣がる虚は、刎ね飛ばされた幾つかの首が据わつてゐた所だ。ふたつの腕で、汚らしく血膿に爛れた屍骸を抱へたまゝで立つてゐた人を思ひ返す。流血淋漓の體たらくに酷い臭氣が漂ひ、歪んだ笑みで血を啜つてゐたのだと云ふ。――嗚、さういへば己の眼で見た光景ではないのだ。さう、聞いただけだ。やはらかいものばかりを兩の手を廣げて欲しがる子が、何故あんなに美しく泣いてしまへるのだらう。心の底から憐れだつた。そして尚且つ愛をしかつた。蜜色の絲のやうな張り巡らされた情の網は、自分の手にもあるものだつた。冀ふものが美しいのは、屹度その子が思ふ全てが美しいからなのだ。望めば叶へてくれるのは、あの朋が如何したつて優しくしかあれぬからだ。斬り付けるやうに冷たい、燒き盡す樣にたゞ熱い。切ないばかりの耐へがたきを耐へてきたのに。

「負けて、云と頷いて」

無慙に爛れた網を握つて呟けば。澄んだ音が響いても、目の前に浮かぶは血塗れた幻、困つたやうに笑ふ姿そればかりなのに。



03.
浅葱色の布切れを手に、童は此方を見上げる。塞げばいゝ、と促されてそのつるりとした手觸りの布を幼い兩の目の上に卷いて後ろ頭で縛る。豐穰の舞を踊る穉兒のやうに、何處か異様な見た目で、にこりと童は笑み返した。抱へ上げて歩いていけば、それは何處か覺えのある感觸で、酷く懷かしくなつた。何時もかうやつて腕の中に、もしくはその柔らかい手のひらを引いて歩いてゐた氣がする。右へ行かう、と幼い聲がして、首肯する。酷く明皙な言葉つきはしかし到底幼さを感じさせない。見えないのに分かるのかと問へば、可笑しさうに身を捩つた。暫く進めば、段々と木々は深まり道が狹くなつていく。なのに分かれ道だけは幾つも幾つもあつて、酷く歪んだ路となつてゐた。見えないと言ふことは悲しいことだ、と童は呟く。だから斯うして抱へて歩いてゐるのだと返せば、ことりと首を倒して、さぞ重からうと云つた。その口許がまた笑みばかりを刻んでゐる氣がして、急に厭になつた。倒された首筋からは馥郁とした白檀の香りがして、それで全てを暴かれたことに氣付いた。何一つ洩らさぬやうに、塞がれた眸は自分を見つめ、それは磨き上げられた鏡のやうに煌々と自分の瞳を灼いた。しなやかで柔らかい抱き心地が酷く自分を苛み、思ひ出してゐた筈の懷かしさを上塗りしていくのを感じてゐた。あゝ、何故間違へてしまつたのだ。もうそれは十五年も前の話だらう。進んだ道の先には、大樹がある。

「また、捨てるんだらう?」

伸びてきた掌が、自分の顔の前で止められる。――この目を塞げばいゝ。白く細い指が生々しく己の眼球へ突き立てられる。その刹那、解けた目隱しの下で慥かに冱えた瞳が自分を映してゐた。



04.
川縁に立つ柳は、明るい最中では優美な緑色ばかりが映える。がりがりとその柳の下で地面に圓を描いて、男はやあやあと聲を上げた。此處にある小枝が美しき鳥となつて飛び立つのだ、見ておれ見ておれと口上を繰り返す。それは鳳凰か、と傍らから聲がする。男はそれに、おうおう鸚鵡にも鴛鴦にもならうぞ、と高らかに笑つた。そしていつの間にか取り出した笛を口に當て、ぴいぴいと高い音で吹き鳴らし始めた。傍らで、でも矢張り鳳凰がいゝな、と呟いてゐた相手は其れを聞くと何やら嬉しさうに男を見上げた。だがその高すぎる音色は、自分には聞き苦しかつた。男が笛を吹きながら足を踏み鳴らす樣は、がくがくと毀れた道具が木枯しに搖れる樣のやうで、恐ろしくもあつた。枝はいつまでたつてもぴくりとも動かぬし、退屈にもなつて、どうせ鳥になんかならないんだらう、と溜息を吐いた。男はぴたりと踊りを止めると、背に負つた箱の中にぽいと小枝を放り込む。傍らの相手はそれに悄々と肩を落とした。哀れに思つて相手に聲を掛けようとしたら、其れより先に男は先程と何一つ變はらぬ口調でまたやあやあと聲を上げた。かうやつて箱の中に入れておけば、今に鳥になるぞ、見ておれ見てをれ。唄ひながら、どんどんと河の岸へと降りていつた。傍らの相手はとことことその後を付いて行つてしまふので、慌てゝ其れを追ひかけて引き止める。水邊でこちらを見た相手は、はつと足を止めた。男は其の儘づぶづぶと水の中へと入つていく。見開き震へた瞳が其れを映すのが哀れで、遮らうとすれば力なく首を振りそれを拒んだ。

「今になる、夜には叶ふのだ」

さうやつて叫びながら、男は頭の天邊まで水に浸かつていつた。向かう岸に上がるのを見屆けようとしたが、いつまでたつても上がつてはこない。横で啜り泣いてゐる人の手を引き、夜になる前に家に歸らうと踵を返した。



05.
ぼんやりと柵の向かう側を覗いてゐる。それは今ではなく古い事で、見知つた筈の場所も眞新しかつたり、逆に朽ちてゐたりするところだつた。人影が見えて目を凝らす。二つばかりの小さい影は、戲れるやうに何處かへと行つてしまつた。次に見えたときには少し大きい影が四つか五つばかり見えた。先程の二人が先を歩いてゐるのだと何故か分かつた。しかしそれが六つになつても七つになつても、影は朧で自分にはよく見分けが付かない。なのに何故か樂しげな雰圍氣ばかりが明確に傳はつてきて、柵の向かう側で一人である己が悲しくなつた。手を繋げば嬉しさうに笑ひ、向かひ合へば微笑ばかりを返してゐるのだ。暫くすると漸く知つた姿がちらちらと見える。一箇所に固まつてゐた影が微妙に居場所なく佇む幾つかの物に分かれた。見覺えがあるといふことは、自分が居て許される場所だと氣付き、ほつと息をつく。けれども先程の光景は、なんて樂しげだつたのだらうと思へば、矢張り悲しみばかりが湧くのだ。小さな影が此方へ向かつて歩み寄つてくる。

「―兄上、」

柵が消えうせた後に殘つたのは、兩の手に握る二つのよく知る影と、目の前で寂しげに笑ふ一人の男だけだつた。



06.
大勢が集まつて、頻りに何かを話し合つてゐた。何をやつてゐるのだと訊ねれば、庭を整へてゐるのだと誰かが答へた。見れば慥かに、造りかけの庭園で立ち動く男が居る。しかし其れは何處か異様な形をしてゐて、自分の知つてゐるものではないやうだつた。しかし群集は頻りに凄いものだと騷ぎ立てゝゐる。こんなものを作るのは屹度、河を渡るより大變なのだらうと誰かが云つた。出來上がれば夢のやうに美しい庭園になるに違ひないと其れに續く聲がする。如何にもしたり顏で語る輩の口調は氣に食はぬが、その言葉を聞くと慥かにさうなのかもしれないと思へた。しかし庭師の男は騷がしい群集にはちらとも視線を向けずに、默々と石を積み上げ、しきりに掲げてある篝火ばかりを見詰めてゐた。たゞ目前の炎と吾あるのみ、あゝいふ態度が立派なものを造るのかね、とまた誰かが云つた。それは珍しく面白ひ事柄のやうに自分の中に響く。よくもまあ一心不亂に立ち動いて作れるものだ。自分ならもつときちりと全體を見て造りたくなりさうなのに。感心しつゝ獨り言のやうに呟けば、庭の近くに立つてゐた男が振り向いて、なんの、と答へる。彼は火で照らされるまゝ、もとからあるべき形に石や木を整へてゐるだけなのだ、さう本人から聞いたぞ、と云つた。そんな事なのか、と思へば急に自分もそのやうな事がしたくなつた。まづ美しい火を掲げて、さあ、と造り始める。だが幾らやつてもやつても滿足がいかぬ。しかも火をもう一度仰げば、それは庭師のものと同じやうで違ふ色をしてゐるのだ。それが嬉しくもあり悔しくも有り、しかし庭を造るといふことが途端に詰まらなくなつた。

「他のことなら、何でもしたいのだが」

だが他の全ての思ひついた善いことを爲しても、あの庭師と同じやうに打ち込めぬのではないかと云ふ豫感がする。薪の爆ぜる音がして、赤い火は一際大きく彈けた。



07.
心細くて仕方が無かつた。大きな船に乘つてゐる。海を切り裂いて進む、それはそれは大層立派な船だ。この船は何處へ行くのだらうと立つてゐた女に聞けば、怪訝な顏をして、何故お前が分からないのかと問ひ返された。憤慨して舳先の方に進んでいくが、その女が大層美しかつたのを何故か今更思ひ出して振り返る。そこには女の姿は無く、そもそも人が立てるやうな廣さは無かつた。とぼとぼと暗い甲板を進めば、男が立つて熱心に星を見上げてゐた。少し曇つてゐるし、大して美しくも無いぢやないかと惡態をつけば、私が今から作るのだからいゝのですと男は返す。さうかい、と返すと何だかつまらなくなつた。自分はこの船に乘つてゐることさえ不安で仕方がないといふのに、星を樂しんだり出來るものか。船内に入れば、煌びやかな宴の最中だつた。幾人かの衆人の眞中から、美しい歌聲と笛の音が響いてゐる。きちりと衣服を調へた二人の人間が樂を奏でゝゐた。陶然と奏で續ける二人は、二人のこと以外には目に入らぬといつた樣子で、そもそも船の大きさなんて覺えてゐないやうだつた。其れを見たらもう心底厭になつて、思ひ切つて人氣の無い場所から甲板の柵を乘り越えた。一瞬の恍惚と引き換へに、だが酷く惜しいことをしたと直ぐに思つた。暖かく大きく安全な船の中は、自分の居るべき場所だつたのだと今更に氣付いたのだ。視界に映る黒々とした海の輝きは、ふと氣付けば先程見かけた美しい女に似てゐた。深く、何處までも深い黒の波は美しい。

「受け止めて、くれるだらうか」

だが船の高さは高くて、中々この身は海へと辿り付かない。どちら側にも戻れぬ恐怖に身を燒かれ續けて、どうにかなつてしまひさうである。心細くて仕方が無かつた。



08.
からからと乾いた音ばかりが響いてゐた。可哀想にと囁く聲が細く慘めだつたので、恐らく自分は強くなるだらうと思つた。次に響いてきたのは硬い壁を頻りに叩く音だつた。全く工夫もなく慈悲もなく叩き續ける、そんな頑なな様は嫌ひではなかつたが、屹度こうは為らないだらう、と思つた。春が來て夏を越し秋が過ぎて冬へと落ちていつた。ふと見上げると、退屈さうに此方を見下ろしてゐる女が居た。お前は私を欲しがらないのかい、と訊ねてくる。さう聞かれなければ、抱いてゐたかも知れぬのに、と哂えば、怒りもせずに女は歩み去つていつた。暫く座つてたが無聊を持て餘したので、出かけることにした。童が立つてゐて、此方を二つの眞つ黒な眸で見上げてくる。頭をそつと撫でゝやれば、礼だと云つて朱塗りの矢羽をくれた。手を振る童と別れ進めば、追ひ縋る様に飛び囘る燕が、ちくちくと突くので腕を振つて巣を叩き落した。また暫く歩いていけば、いつか聞いたやうに壁を叩く音がした。しかし以前聞いた音とは明らかに違ふ音色である。樂師を氣取つた叩き方は以前と違つて煩はしかつたが、その樂の音そのものは美しかつた。ではその壁の中には何が在るのだらうと氣になつて、壁をよぢ登つた。漸く登りきつて目に飛び込んできたのは、色とりどりの玻璃の缺片だつた。水桶の中に煌々といくつもの缺片が竝んでゐた。そしてその水桶の前にはじつと座り込んだ姿がある。暫くその姿を見詰めてゐたが、けれどもその背はちつとも動かない。

「一緒に、見てゐていゝか」

頷く事はないと何故か知つてゐた。拒まぬのが、最大限の許容なのだと分かつた。さうやつてまた同じやうに座りこむが、今度は持て餘すものは何もないのだつた。



09.
祈るときには、相手の名を呟くのだと云ふ。慥かにその人は幾度も幾度も誰か知らぬひとの名を呼んで、祈つてゐた。神佛に祈つてゐるのだ、と云ふ割には目の前にはそれらしい像や棚のあるわけでもないのだが。百度呼べば振り返らう、千度呼べば此方へ來る。萬を越せば、その名が屹度自分のものになるのだよ、と云つてゐた。少し怖くもなつて、その袖を引いて訊ねる。そんなに呼ばずとも、かうやつて手を引けばいゝのに。だが嗤つてその人は自分の手を取つた。手を引かずに、手に入るから意味があることもあるのだ、と笑んだ。絡む指は温かくて、恐怖をすうつと吸ひ取るのだつた。 髮を梳る手がすんなりと細くて、その人は自分の頬をゆつくりと撫でる。けれどもお前は萬も呼ばずとも、手に入れることが出來るのだよ。くすくすと吐息を轉がしながらその人は續ける。逆に幾度だつてお前を呼んでくれるに違ひないよ。だいぶ機嫌のいゝ口調に、ふと訊ねてみる氣になつた。不思議だと思つたことは幾度もあつたが、何故か今まで訊ねる機會を逸してゐた。

「私の名前は、何と云ふのですか」

くすくすと笑つてその人はまた祈りを一つ、と重ねる。これはお前の名前ではないけれど、お前のものなのだから大切に手にしておくがいひのさ、と云つた。お前の上に重ねて祈るから、きつと何もかもを手に入れて、しあはせになれますやうに、と。



10.
夢に勝る甘美はないのだと男は言つた。さうなのかも知れない、と返す。兩腕に卷かれた白い巾には赤黒い染みが斑に浮き上がつてゐる。縫ひ合はされた、柘榴のやうに裂けた疵口からは白く骨が覗いてゐた筈で、今更ながら辟易とする。だが隣の男は自分よりもつと厭さうな顏で溜息をついた。それで、どうしてその甘美な夢を捨てたのですか。新しい巾と水桶を手繰り寄せてから、男は此方を覗き込む。その問ひは幾つかの意味に取れるが、どれにしたつてどう答へていゝのか分からない。素直に返せば、男は苦く微笑んだ。とん、と解かれた汚れた巾がするすると腕を落ちてゆき、剥き出しになつた腕に男は濡れそぼつた布を容赦なく乘せた。うぅ、と呻いて齒を食ひしばれば、男は酷く似合はぬ柔らかい笑みで名を呼んだ。あなたは夢が無くては生きていけぬ人だ。昔も、今だつて。痺れた腕は感覺がないが、そつと頭を上げる。さうなのかも知れない、だが慥かに今も生きてゐる。眞面目くさつて返せば、噴出しつゝの揶揄い調子がその語尾を打ち消す。そんなことを言つて、冬にも、この前にも死に掛けたくせに。遠慮のない輕口が、だが不意に萎んだ。彼の地で倒れたときも、この地で先日倒れたときも、結局は夢を追ふのだと、思つたものよ。嗚呼如何しても追つて行きたいのだなあと、思つたものだ。先程から本に、そんな口調は似合はない。そつと笑つて、友と呼んでいひのか長年惱んでゐる男の肩を叩く。夢を失つた訳ではない、そしてまだ自分には掻き集めるべきものが殘されてもゐるのだ。

「掲げた夢など、一つあれば十分だ」

生まれてから、死ぬまでに。さうですか、とわざとらしく肩を竦めて見せた男が、その実、珍しく本物の感傷に浸つてゐるのを知つてゐた。背が破けるやうに熱く、だがそれ以上に目蓋の奧で今までずつと見續けてゐた輝ける炎、麗しい月光の銀は鮮烈だつた。自分はこれを、これだけを抱いて死ぬのだ。――夢は終はらず、そして恐らく續きもしないだらう。













夢明かし解説

1・師さん……兄上がたそのものだという夢。兄上自身は一面真っ暗で、月はたそのこと。なら自分も兄上に夢(星)を描いてもいいだろうという訴え。兄上は月を越せるほど撒けるなら撒いてみれば?的。最後は一瞬デレ入り。
2・たそ……観応期・高兄弟を殺して一回、戦に勝った辺りの話。師さんの屍骸抱える兄上も大概精神荒れてる筈ですが、それより勝ったたその方が傷ついてるという話。何回か思い描いてるのは兄貴と冬様。最後の笑顔だけ兄上。
3・兄上……抱えてる子は冬様なんだが兄上は最初たそだと思ってる。罪の意識な話。兄上にとって冬様は自分そっくり鏡像的意味と、たそ的な庇護とか罪悪感を感じてる立場という二重写し。目潰しっ。
4・たそ……男=G天皇。はしゃいでるのが兄上。夢見がちな兄上とどうみても詐欺師なGにたそが苦労してる話。
5・基君……残った3人は冬様とあきつんと兄貴。最初に見えた二つの影は兄上とたそ。昔は幸せだったんだよ的話を、兄貴かあきつんあたりから聞いたんでしょう。「兄上」…はどっちでもいいけど多分あきつんかな。
6・兄貴……器用すぎる器用貧乏な話。庭師が兄上で篝火がたそ。たその為に何でもしたいようなしたくないような、なんだか複雑な感じ。
7・あきつん……(船)兄上の愛→冬様への愛(海)への移り変わりなイメージ。女は霞様、男は師さん(第一夜的な意味で)二人は兄上とたそ。
8・キャタ……鏡像で己を判断する行為について。打てば響くというか相手の態度に対して素直だという話。最初らへんはパパが死んで伯父上にひきとられた境遇、女は権力とか家とかまあそんな色々。童は兄上、燕は師さん、新たに壁を叩くのは兄貴で、座りこんでたのはたそ。
9・冬様……酷い話すぎてちょっと後悔…霞様怖いようというストレートな話
10・兄上……夢の後。例のたそ死後の精神病状態から我に返った後の話。死期を悟りつつ道誉と話してる場面。